九日目  中国 北京 京華飯店

世界のバックパッカーが集うという、北京には数少ない安宿、京華飯店。ネット上の様々な旅行記でも、数々の伝説や思い出が生み出されている宿。私もその仲間入りを果たすべく、北京駅を9頃に降りてからすぐに宿へ向かうことにした。行き方は、昨日得た情報をしっかりメモってきたのだから、怖いものは何もない。 早速、指示されている方角と逆の方向へ、駅の右側へと歩き出す私。ある程度歩いてから、やっぱり変だな? と思い直す。数メートルおきに立っている、公安の人に道を聞いてみる。ザイナーリ? と言って、メモ帳に書いた前門のバス停と、バス停を探している、という文を見せる。すると、…左の方向を指さした…。がっかりしたが、それでも、意思の疎通が取れたことがとても嬉しかった。そのまま正しいとされる道をとぼとぼと歩く。北京駅に降りたときは、曇っていて、やたら天気が悪いなあと思っていたが、その正体はどうやら黄砂だったようだ。黄砂が景色を黄色くさせていたのだ。中島みゆきのすごい節のついた歌を思い出す。ああ、あれもそういえば旅人の歌だった。中国にいるという実感が湧いてくる。ふと車などを見ると、砂がつもってセピア色になっている。私のとっても好きな色ではあるが、景観を何でも古めかしされて、汚れがひどくなるのであれば、街の人にはたまったものではないだろう。バス停までもうそろそろかな…と思っていても、なっかなっかつかない。荷物が重いため、足取りも重い。おかしいなあ〜、北京駅から少し歩くと前門駅のバス停があるはずなんだが…。不安になりながらも、かれこれ三十分近くも歩いている…。そのうち、道路標識に、前門大通り、と記載されていたのが目に入った。とりあえずこちら側で間違いはないようだ。しかし、某サイトの京華飯店へに行き方に沿っているのだが、簡単に行けそうに書いてあったのに…。こんなに歩くならバスで行った方がよかったな。あの管理人はきっと荷物の軽い人で歩くのが大好きだったんだろうよ。なんて理不尽な悪態を一人でつく。やっとの思いで前門駅へ着いたが、さて、そこからまたバスナンバー66を探すのに一苦労である。なにしろ荷物がかさばるため、自由に動けない。行き場のない怒りの気持ちがこみ上げてくる。多くの人にザイナーリ、ザイナーリと聞きまくって、階段を上って降りてを繰り返し、そこからまたウロウロウロウロ一時間くらいかけて66番のバス停を見つけ出した。バスに乗って、一元払い、真ん中に係りのおばちゃんが座っていたので、洋橋南と書いた紙を見せ、ついたら声をかけてください、と言ってみた。おばちゃんは、対!(ドェイ!)と笑顔で言ってくれたので心強かった。バス内では電子掲示板にも漢字が表示されているので、おばちゃんに聞かなくてもわかりそうだったが、できるだけ用意した中国語を使ってみたくてあえて言ってみたのだった。でも、こんなにはっきりと返事を返してくれると本当に嬉しい。行き方では、バス停を降りたら真っ直ぐ歩く、とのことだったので、そうした。そして、橋があるので橋を渡ったらすぐ、とあったのでそうした。しかし、いくら歩いても京華飯店 なんて見えて来ないよ〜泣。周りにもバックパッカーらしき人や外人や日本人なんて一切見かけない。もう、どうして?! どこのサイトにも北京バックパッカーの聖地みたいにかかれているのに!! ここでも途中途中、ザイナーリザイナーリと聞きまくるが、知っている人がほとんどいない。ふくらはぎがぱんぱんで、嫌な痛みを感じた。空腹でイライラする。もういい加減うんざりしてきて、タクシーを拾った。一つ目のタクシー運転手は知らなかった。二つ目のタクシー運転手は、知っているから乗れという。しかし、今まで来た道を引き返し、さらに指定されていた方向とは別の所へ向かう。まさか違うところへ向かっているのでは?! と不安になりながらも、わずか二分ほどで目的地へ着いた。こ、こんなところにあったのか?! 書かれている行き方とは全然違うじゃないか!! わけがわからないながらも、運転手が1、と指を立てるので10元払った。メーターも動いていたようだが、どこに表示されているのかわからなかった。でも、今思えば二分で10元はなかったよな、きっと。帰り際に運転手がおつりを用意していたように思えたのが頭に引っかかる。でも確かめる余裕などあるわけもなく、京華飯店に飛び込んだのだった。

受付の女性は、とても事務的な雰囲気だった。とにかく、用意していた中国語で、部屋はあるかと聞いた。あると言うが、200元ほどするという。それは高すぎる。ドミトリーには泊まれないのか? と聞くとNOと言う。なぜかと聞くと答えてくれない。明日ならあるかと聞くと、Noと言う…。なんなんだろう、一体? もっと粘って聞いてみれば良かったのか? そんなにたくさんの宿泊客がここにはいるのか? そのうちに、なぜか100元、ということになっていたので、とりあえず泊まることにした。デポジットと合わせて250元取られる。もしかしたら最初の値段はこのことを言っていたのかも知れない。今から他の所を探す気にはなれない。本当に交渉が上手くいかない。メニューには、経済部屋が30元と書いてあり、看板にもそのようになっているのに、そこに泊まれない。空腹なのも合わさってきて、イライライライライライラ。部屋の中はツインルームで、普通に綺麗な部屋だった。でも、私はもう孤独に疲れ切っている。とにかく同じ旅の仲間を見つけたかったのに…。ふと、北京京華飯店と書かれている紙を見つけた。も、もしや、ここは京華飯店の偽物なのか?! そんな気持ちにまでなった。

部屋で少し昼寝をして、再び外に出て、さっき行こうとしていたバス停の方の道へ引き返してみることにした。その前にさっきの受付の人にネットカフェの場所があるかと聞くと、知らない、と言われた。それも探すしかない。ちなみに部屋でも使えるか?と聞いてもNoと言われた。バス停に引き返しそこから真っ直ぐに行くと、確かに小さいけれど橋もあるし、ここで間違えがないはずなのに。しばらく川沿いのあたりをうろついていると、ネットカフェの看板を見つけたので、入って調べてみることにした。しつこく検索してみると、2004年辺りから京華飯店の情報が変わり初めていることに気がつく。改装中だったり、ドミトリーに入れなかったり、などなど。そして、「かつての」バックパッカーのたまり場、などという言葉まであった。…私は、来るのが遅すぎたのだ。北京YH、兆龍YHと共に、京華飯店のドミトリーまでも私は加われなかったということだ…。悲しいかなその気持ちを、橋の横をジョギングすることで紛らわせるしかなかった。久しぶりに走ったが、身体がものすごく軽い。そりゃそうだ、ここ最近毎日あんなに重い荷物を背負っていたのだから…。しかし、おなかの中に何も入っていないためか、すぐに力尽きてしまった。帰り際、京華飯店までの道に先ほどの橋とはもっと違う大きな橋があることに気がついた。川の水は干上がっているが、確かに橋だった。某サイトの行き方の説明では、ここの橋のことを言っていたのだろう。そうなると考えられることはただ一つ。バス停の場所が私が見た情報のときと比べて変わっているということだ。実際バス停の名前も、洋橋から、洋橋南、へと変わったようだった。それとも関係があるのかもしれない。昨日の日記では、情報は力なり、と書いたが、常に最新の物を手に入れられなければ意味がない。情報に頼り切っても駄目なんだ。時には、やはり自分の足で探し目で確かめるしかないのか。一応、ここにも書いておくか。万が一京華飯店へ行く人へ。前門方向から洋橋南のバス停に降りたら、バスが来た道を引き返すと、大きな交差点にぶつかるので、そこを右側に折れてから真っ直ぐ歩きましょう。すぐに大きな橋が見えてくるので、渡りきった先に京華飯店があります。30元の経済部屋は泊まれるのかわからん。一応、明日、そちらへ移れるか聞いてみて、駄目だったら宿を出ることにする。100元なんて高くて駅から遠いところに、これ以上いても意味がない。これは2008年3月現在の情報です。

宿に帰ってきて、プールなどもあるというのでいろいろ探してみたが、見つからなかった。だが、かつて、多くの旅人たちが語り合い、旅の疲れを癒やしたであろうたまり場の残骸はあった。せめてもの記念に、と思い写真を撮ってみた。乱雑に置かれている椅子やテーブルなどが切ない。NEW DOMITOLYエリアというところは、ソファで入り口がふさがれているという退廃さ。地下の扉には、INTERNETと書かれた部屋があったので、開けてみたが、物置のようになっていた。休憩所のようなところを彷徨っているうちに、宿泊客らしき休んでいた男の人が、ソファから腰を上げて声をかけてきた。しかし、さっぱり何を言っているのかわからない。ソーリーソーリーと言って離れる。なんて格好悪いのだろう。

なんだかちっとも調子が出ない。だめな旅行者の典型となっている自分にものすごいイライラする。海外で値切るのも交渉するのも下手だけど大好きで、負け試合は大嫌いだ。誰だってそうだろうけど。少しでも理不尽なことがあったら、どこまでも追求するのが私のスタイル。しかし、今はもう、ゲッツ板谷的に言っても負けっ放し…。ワルボロがレンタルされたようなので見たいな…。何も出来ないのよ本当に。気力も湧かない。ネットで、京華飯店で私のようにダウナーになっている男の子に声をかけている旅行記があったが、今はその男の子が羨ましい。中国ノイローゼになっていても、少なくともちゃんと声をかけてもらえる相手がいたし、京華飯店のドミトリーにだって行けているのだから。ああ、心がどんどん荒んでいく。

その後、また宿を出て、マクドナルドへ入る。中国に来てからろくにご飯も食べていない。ただいま三時。これがやっと初めてのご飯である。旅行に行ったら一般庶民の人たちと同じ暮らしを体験することは旅行者の義務である。屋台や露店のご飯を食べるのは当たり前のことである。しかし今、旅行を楽しむという心情には到底足りない。そんなことやってらんねー、というのが正直なところである。おまけに中華料理というのは大勢で笑いながら食べるのが礼儀と来てる。ということで、マックでハンバーガーとポテトとコーラを食らう。看板にも出ていたが、ここのマックは24時間営業のようだ。それでなのかわからないが、夕方頃になってマックの前に露天がたくさんできてきた。住民向けの物から、旅行者向けの物まで、多々ある。もしかしたら、京華飯店のドミががいっぱいだった頃は、もっとすごく賑やかだったのかもしれないな…。

宿に戻って、先ほどの露天で35元で手に入れたアディダスのジャージを着て、化粧品屋で買った、「美の美」というパックをする。袋には海藻と書いてあるが、鳥のえさのような、粟のような匂いである。水につけると、粘度が出てくるのでそれを顔に塗る。鏡で見ると、ナイアードのカスールよりもぐろい。粟のような粒は消えないので、これは水道に流せないなあ、と思い、まずつぶつぶだけゴミ袋に捨てる。粘度だけが顔に残って、つっぱる〜! 結果、大した効果はなかったようだ…。ちくしょー!! 明日は、観光バスに乗って、万里の長城やらに行ってみたいと思っているが、朝がすごく早いので行けるかどうか微妙だ。荷物の問題だってある。でも、これを逃すと来た意味がない。できるだけ頑張ってみよう…。ちなみに、今日の日記は空腹でイライラしながら書いているので、不快な表現が含まれているかも知れませんが、すみません。結局マックで一食しただけで終わってしまった…。それにしても今日は一日、イライラしっぱなしだった。ああ、滞在型の旅がしたい。では、おやすみなさい。





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